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奥三河星空コラム

星めぐりの歌

星空案内人、横幕です。
みなさんは、星めぐりの歌をご存知でしょうか?
かの有名な宮沢賢治が作詞作曲した歌で、お話「双子の星」や「銀河鉄道の夜」に歌詞が出てきます。

一度は耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
~星めぐりの歌~
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の  つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。
このような歌詞です。
メロディはウィキペデアで聞くことも可能ですよ。
今回は、この歌をもとに、星めぐりをしてみましょう。
①あかいめだまの さそり
これは、さそり座と、その一等星アンタレスをあらわしていますね。
さそり座は夏の星座で、南の空の低いところにあります。
その為、さそり座を探す時は、まず南の空の低いところにある赤く輝く星アンタレスを見つけましょう。
歌ではアンタレスを「あかいめだま」とあらわしていますが、位置的にはサソリの心臓といった感じです。
アンタレスの周りの星を釣り針の様につないでみると、夜空にさそり座が現れます。

さそり座

②ひろげた鷲の つばさ
わし座も夏の星座の一つです。
さそり座から天の川つたいに目線を上げていくと、白く輝く一等星アルタイルがあります。
アルタイルはアラビア語で「ワシ」を意味していて、この星を中心に周りの星を少し崩れた十字架の様につなぐと、夜空に翼を広げるわし座が現れます。
また、アルタイルは七夕伝説の彦星にあたる星で、夏の大三角を作る星の一つでもあります。
七夕伝説や夏の大三角については、コラム「天の川と七夕のお話」をご覧ください。

わし座

③あをいめだまの こいぬ
こちらは冬の星座こいぬ座です。あをいめだまは一等星のプロキオンです。
プロキオンはギリシャ語(ラテン語)で「犬に先立つもの」という意味があり、おおいぬ座の一等星シリウスの少し前に上ってきます。
古代エジプトでは夜空にシリウスがのぼる頃、ナイル川が氾濫し、肥えた土を運んできたそうです。
それを知らせるまえぶれとして、この星を目印にしたといいます。
古代の人々にとって自然の営みと星の位置はとても密接に生活に関わっていたのです。
また、プロキオンは冬の大三角形や冬の大六角形を形づくる星の一つです。
冬の星空を彩る大切な星プロキオンと、3等星のβ星ゴメイサを結んだ線で夜空にこいぬ座が現れます。
星座線からこいぬを想像するのは少し難しいかもしれませんね。

こいぬ座

④ひかりのへびの とぐろ
夏の星座へび座は、へびつかい座に絡みつく蛇をあらわした星座です。
へび座の間にはへびつかい座が入るため、あたまと、しっぽとが分かれています。
全天88星座の中で唯一ふたつに分かれている珍しい星座ですね。
へびつかい座とセットにした方が覚えやすいかもしれません。
へび座を見つけるには、まずへびつかい座を見つけてみましょう。
さそり座の北あたり、大きな五角形の様に並んだ星がへびつかい座です。
この五角形から左右に伸びるのがへび座。
へびのアタマは西から、シッポは東に天の川の中。へびつかい座の両腕にしっかりとつかまれています。
へび座とへびつかい座をセットにすることで、全天で一番大きな星座が夜空にあらわれます。

へびつかい座

また、この歌詞のへびは、りゅう座として説明されることもあります。
りゅう座は北極星を含むこぐま座の周りに、大きくとぐろを巻く竜をあらわした星座です。
へび座はトグロをまいていないので、りゅう座の方が歌詞にふさわしいのかもしれません。
りゅう座は夏の星座ですが、天の北極近くにあるため1年中姿を見る事ができます。

りゅう座

⑤オリオンは高く うたひ つゆとしもとを おとす
露や霜が降りるころ東の空から登り、見ごろを迎えるオリオン座は、2つの一等星と5つの二等星を含む、きらびやかな冬の星座の主役です。
一等星は、冬の大三角形をつくる星の一つベテルギウスと、冬の大六角形をつくる星の一つリゲルがあります。
星座線で結ぶと鼓やリボンのように見えるオリオン座に星座絵を重ねると、真ん中に並ぶ三つ星が腰のベルト、その下に並ぶ暗い三つの星「小三つ星」は腰にさす剣のように見えます。
この勇猛な狩人オリオンのお話については、コラム「オリオン座にまつわるお話」をご覧ください。

オリオン座

⑥アンドロメダの くもは さかなのくちの かたち
アンドロメダの雲はアンドロメダ銀河をあらわしています。
私が子供の頃アンドロメダ星雲と呼ばれていました。
光の雲がモヤモヤッと見えて、ちょうどサカナの口があいたようなカタチです。
望遠鏡を覗くと、ボンヤリと輝く姿を望むことができます。
写真を撮ると、大きく広がった星の雲が綺麗に渦を巻き写し出されます。
このアンドロメダ銀河は、秋の星座 アンドロメダ座にあり、月のない暗い夜には肉眼でも見ることができます。
アンドロメダ銀河の見つけ方は、コラム「アンドロメダ銀河」をご覧ください。

アンドロメダ銀河

⑦大ぐまのあしを きたに 五つのばした ところ
 小熊のひたいの うえは そらのめくりの かなめ
春の星座 おおぐま座は北斗七星を含む巨大な星座。
北斗七星のα星とβ星を結んだ線を5倍ほど北に伸ばすと、
こぐま座のしっぽの先、「空の巡りの要」北極星にたどり着きます。

歌では小熊のひたいですが、実際はしっぽの先ですね。

おおぐま座やこぐま座、北斗七星については、コラム「春の星空「北斗七星」にまつわるお話」をご覧ください。

空の巡りのかなめ

星めぐりの歌をもとに星空をめぐってみましたが、詩の中に出てくる星座は、季節によって見えるもの、見えないものがあります。
その時々に見える星座たちと歌とを比べながら、あれやこれやと想像をするのも楽しいのではないでしょうか?

もうすぐやってくる秋の星座巡りに関しては、「暗い夜空を求めて~秋の星空編~」を参考にしてください。
夜空には星と一緒に沢山の物語が散りばめられています。
晴れた日は奥三河で、ご自宅で、夜空を見上げてみてくださいね。

コラムby 星空案内人 横幕 浩
KEYWORD
#星めぐりの歌 #宮沢賢治 #星座