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奥三河星空コラム

光年って距離の単位?星空観察がもっと楽しくなる豆知識

天文台で観察会をしていると、「この星はどのくらい遠いのですか?」という質問をよく受けます。「25光年かな」と答えてもピンとはこないし、「5000万光年です!」と答えても「ごせんおくまん光年!!??」とさっぱり分からなくなります。

今日は、星までの距離のお話です。
距離の話は、距離の測り方と切っても切れない話ですが、今回はまず、距離の単位、大きさのお話をしましょう。

星までの距離を測定する上で、最も基本的な単位は、地上と同じ『km(キロメートル)』です。1km以内に存在する天体はなく、メートル法では、これを超える一般的な単位はありません。(Mm(メガメートル)やGm(ギガメートル)という単位を耳にする機会は少ないでしょう。)

しかし、kmで表現できる距離は、せいぜい太陽系の内側までです。

撮影:つぐ高原天文台
地球に最も近い天体である月までの平均距離は約38万4千kmです。数字で正確に表すと、384,000 kmとなります。
地球から太陽までの距離は約1億5千万kmで、これは150,000,000 kmと表記されます。
また、地球から土星までの距離は約13億kmであり、1,300,000,000 kmと表されます。

撮影:つぐ高原天文台
これよりも遠くなると、ゼロの数がどんどん増えて分かりにくくなります。そこで、単位を変更する必要があります。しかし、メートル法ではkmよりも大きな一般的な単位は存在しないため、新しい単位を作りましょう。それが『光年』です。
光年とは、光が1年間に進む距離を表す単位で、1光年は、約9兆4600億kmに相当します。『年』という文字が含まれるため、時間の単位と誤解されがちですが、距離の単位です。
光の速度は秒速約30万kmなので、これに1年の秒数(約365日×24時間×60分×60秒=31,536,000秒)を掛けることで計算できます。
発見されている地球に一番近い恒星(プロキシマ・ケンタウリ)までの距離は、約4.2光年(約40兆km)。数字が小さくなって、ほっとしますね。これより遠い天体の距離を表すには、この『光年』を用いるとよいでしょう。アインシュタインの相対性理論によれば、真空中を進む光の速度は物体の運動に関係なく一定であるため、宇宙の距離を測るものさしとして大変都合がよいのです。
しかし、星まで4.2光年と言われても、距離感がつかみにくいですよね。
天文台では、このような説明をしています。

たとえば、こと座のベガ『織姫星』までの距離は約25光年。ベガの光は、25年かけてようやく地球に届きます。つまり、私たちが今見ているのは、25年前のベガの姿なのです。25年前、あなたは何をしていましたか?
逆に、ベガで誰かが今、地球を観測していたとしても、それは25年前の地球の姿。あなたがまだ生まれていない頃の地球かもしれません。 それくらい遠いんです。

どうですか?少しは距離感がつかめましたでしょうか?宇宙で最も速い光でさえ、25年もかかるんです。本当に、めちゃくちゃ遠い場所から届いた光を、今、あなたの目で直接見ているんです。これほど遠くからでも光は届くんですね。光ってすごい!
「この天体望遠鏡ではどこまで遠くが見えるのですか?」という質問もよくいただきます。天文台長の私が、これまでに観測した最も遠い天体は、おとめ座にある銀河M104、通称ソンブレロ銀河で、約5000万光年先に位置しています。つまり、5000万年前に発せられた光が、今、地球に届いているのです。5000万年前の地球といえば、恐竜はすでに絶滅していたかな?哺乳類は存在していましたが、人類はまだ影も形もありませんでした。
これくらい遠い距離になると、「どのようにして測定するのだろう」「その測定は正確なのだろうか?」という疑問が湧いてくるのも当然です。実際、このソンブレロ銀河の距離についても、『6520万光年』や『3680万光年』という異なる値で表記されていることがあります。注)
宇宙の距離を測定することは、非常に難しい観測作業です。そのため、測定値の一番左側の数字、つまり一桁目が合っていれば、素晴らしい観測結果と言えるそうです。
天文学者には、おおらかな心が必要ですね。次のコラムの話題としましょう。

撮影:つぐ高原天文台
今見ている星は、何年前の姿?と思いながら星を見るのも愉快でしょう?
つぐ高原天文台ではいつも、その日に見ることができる天体の距離をテーマにお話しをしています。
4月になれば2025年シーズンの始まりです。
ぜひ今年も、つぐ高原天文台にお越しください!

コラム by つぐ高原天文台・星のソムリエ® 平野宗弘

注)M104までの距離について、
  天文年鑑2025では、6250万光年
  理科年表2025では、3680万光年
  Wikipediaでは、5000万光年 と記載されています。
KEYWORD
#星の距離 #光年