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奥三河星空コラム

「食」のお話し

「食」といっても食べ物の話ではありません。
「星食」、月が惑星や恒星の前を横切って隠される現象の話です。2024年は、みかけの月の軌道が、土星やアンタレス、スピカのような1等星以上の明るい惑星、恒星の位置に近く、いつもの年に比べ星食がよく起こる年のようです。
月は、地球の自転による日周運動で、夜空を毎日東から西に、そして、月が地球の周りを公転することにより、背景の星空に対し少しずつ西から東に動いています。月はおよそ27日(恒星月)で地球を1周しますから、1日に約13度(≒360度/27日)東に動くことになります。これは結構速い動きで、1時間で約0.5度(≒13度/24時間)、およそ月のみかけの直径分、背景の星々を次々と隠しながら動くことになります。

さて、奥三河星空コラム「2024年 注目の天文現象」>>によると、

  2月 5日 アンタレス食
  5月 5日 火星食
  6月20日 アンタレス食
  7月25日 土星食
  8月10日 スピカ食
 12月 8日 土星食
 12月 9日 海王星食
 12月25日 スピカ食

のように、毎月のように明るい星の星食が起こります。前のコラムにもあるように、なんと言っても、12月8日(日)宵の土星食が、今年のおすすめ、ハイライトです。でもその前に、6・7・8月に星食がありますから紹介しておきましょう。
6月20日(木) アンタレス食
夕方、18時ころ、東の空で、昇ったばかりの満月前の月に、さそり座のアンタレスが隠されます。1等星のアンタレスですが、まだ日没前の明るい空の中ですから肉眼では見ることはできず、双眼鏡や天体望遠鏡でも見えるかどうか… 各地の天文台でYouTubeなどのライブ中継があるかもしれません。
7月25日(木) 土星食
午前6時半ころ、西の空で、朝の月に土星が隠されます。すでに太陽が昇っていて白昼の現象になりますが、天体望遠鏡で観察できると思います。今年2回ある土星食の1回目ですからおそらくライブ中継があるでしょう。
8月10日(土、夏の連休初日) スピカ食
宵の口、20時ころ。西の空低く、太めの三日月風の月に、おとめ座の1等星スピカが隠されます。日没が18時45分ころですから空はだいぶ暗いはずですが、西の空が開けているところで、双眼鏡などで月に寄り添うスピカを見つけられるでしょうか?

2013年8月12日のスピカ食
月縁から出現したところ(矢印の青い星)
この3か月の星食は、観察するには条件が厳しいものが多く、明るい惑星や恒星の星食でも双眼鏡や天体望遠鏡が必要です。近くの星空観察会や天文台で観察させてもらいましょう。
なにより天気。月が見えている方向に雲がない事。地平線近くの現象が多いので、ビルやマンションなどの高い建物がない開けたところで観察しましょう。
近日では5月5日に火星食がありました。白昼12時の現象でしたが、各地の天文台からライブ中継があり、真昼の春かすみ、雲間からぎりぎり観察できたようです。
12月8日(日) 土星食
さてちょっと先ですが、2024年本命の「宵の土星食」です。
夕方日没後、18時ころ、南西の空ちょうどよい高さで、上弦直前の月に土星が隠されます。奥三河では、18:19に月の暗い側から土星が隠され(潜入)、18:55に月の明るい側から出てきます(出現)。土星はみかけの大きさがある天体ですので、天体望遠鏡で見ると、1分30秒くらいかけてだんだん隠され、その後、出てくるのがとてもワクワクします。双眼鏡を三脚に載せて観察するのもよいでしょう。天体望遠鏡でのデジタル映像でみんなで観察できるとよいですね。つぐ高原天文台でもぜひ観察しようと思います。
冬のこのころは天気も期待できます。天気が悪くてもきっと各地の天文台からライブ中継があるはずですよ。

2024年12月8日土星食
奥三河での18:19潜入直前の予想図(ステラナビゲーター12で作成)

ちょっとマニアックな星食観察。奥三河各地での観察会でも特別に見る機会があるかもしれません。ぜひ奥三河星空観察会で繰り出される天体望遠鏡で、めずらしい天文現象を観察してみてください!

コラムby つぐ高原天文台 台長 星のソムリエ® 平野宗弘
KEYWORD
##土星食 #アンタレス食 #スピカ食